メモ帳

※注意※「色々酷い事を書いているので閲覧注意」

戦争概論 第二章軍事政策の一部の原稿

これは動画制作の時に使った原稿で第二章の軍事政策の後半部分です
これを作る際も少し削り、ここからもっと削っていきますが
正直言ってそれは、愚行であると自分は思っており
皆さんにはぜひ戦争概論を手に取って、実際に読んでいただきたいです


もし皇帝直々に軍を率いることが、一国にとって有利であるんでしょうか?

まあ、この疑問について結論がどうあれ

もしこの皇帝が、フリードリヒ大王やピョートル大帝、あるいはナポレオンのような素晴らしい才能に恵まれているのなら

自らなすべき偉大な、行為遂行の栄誉を断じて、彼の部下や将軍たちに委ねることのないことは確かです

なぜなら、もしそのようなことをすれば自らの皇室の栄光と国家の安泰に忠実でないからです

皇帝が大元帥として出陣する必要を感じつつも
最高指揮権行使に必須の信念を欠く場合には
最高の資質を備えている二名の将軍を随伴させるといいでしょう

すなわち、一人は行政事務に堪能なもの
もう一人は、高度な教育を受けた幕僚将校です

しかし、この二人を選ぶのは 皆さんがわかる通り非常に難しいことです

まず第一に、、優秀な将軍を選ぶには、選ぶ人も高い見識がなければいけません
また、党派とか政党などの影響を気にしないような人々の意見で支持されるような人だとかです

しかし、数々の戦いで勝利してきて、もうすでに名が知れ渡っている将軍がいれば
探し出し選び出すことは、さほど難しくありません

ですが、単に戦いに勝ったからと言って、優れた人物か というと違う場合もある

常勝の将軍はいつも政府の意のままに動くものでない場合もあり
このような人物の時は、他の将軍と比べることは大変難しいです



将軍としての最高の資質は、何といっても第一に
重大な決断を下すことのできる 高度の責任感を備えていること

第二に、危機にたじろかない勇猛な心を持っていること

この二つです

学問や軍事上の知識はこれらに次ぐものです

様々な知識を持つことは、
必ずしも必要なことではありません

知識が限られていてもいいんです
しかし、その知識を深く理解していなければなりません

そして戦いの術の基本をなす原理を完全にマスターしていなけてばなりません

その次に重要なのは
彼の人格からくる資質です

男らしく、公正で、信念を貫き、欲がなく
他人の長所を妬むどころか むしろこれを尊重し

そして、自らからの栄光に加えて功績を作り上げることに巧みな人物は
必ずや立派な将軍であるとともに偉大な人物としても通用することでしょう

ところで、よく 部隊勤務の豊富な将軍を総司令官にするか
または、部隊の運用の経験が少ない幕僚将校を総司令官にするかを聞かれますが

戦争は一個の特殊な学であるため
部隊運用の経験が少ししかなくとも、立派に作戦を指導できる場合もあります

そうなると、経験不足の幕僚将校でも、十分名将の可能性があります
もし彼が、兵站管理の実務の中で、大きな失敗もせずに過ごしてきたのなら
むしろ、戦争についての才能に恵まれている可能性が高いです

これと同様に、歩兵や騎兵から叩き上げた将軍も
非常に優秀な戦術家として活躍する可能性が大いにあります

したがってこの問題は、全部が全部人それぞれの固有の資質によるため
誰が、何がよい ときめつけられるものではありません

ともかくも、以下の見識はなんらかの約に立つかもしれません

まず、参謀部や工兵科、または砲兵科にいた経験があり
師団または軍団を指揮したことのある将軍は
一つの兵科にしかいなかったものよりもはるかに勝っていること

軍事学の研究をしている将軍は
大軍の指揮でも十分こなすことができるでしょう

人間としての性格や特質は
総司令官として、必要な要素の最上位にあること
またこれに、優れた学問の結合は偉大な将校を作り上げることでしょう



さて、常に最適な将軍を選ぶことがとても難しいことがわかりましたが

そこで、将軍を補佐し、作戦に有利な感性を及ぼすことのできる
幕僚の構成が必要になってきます
実際よく訓練された幕僚は、あらゆる軍事組織の中でも
もっとも有効なもののひとつです
しかし誤った原理がその中に導入されることを
なんとしても防止しなければいけません


ところで、今までの実績を大勢に認められる将軍がいない場合
軍の最高司令部を構成するための最善の策が以下のものと結論とするのが無難でしょう

戦いでは勇猛果敢で 危機に直面してもビビらない人物に最高指揮権を与え
この指揮官と裏表一体で、完璧な連携ができる 優れた手腕と
偏見のない、誠実な性格に恵まれた人物を、その幕僚長にすること

もし、これができたとき 今までにないような素晴らしい栄誉を勝ち取ることができるでしょう

ナポレオンに決定的なダメージを与えたブリュッヒャー
グウナイゼナウとムッフリングに補佐されたからこそ
彼一人では到底、手に入れられないぐらいの栄誉を勝ち得たのです


では、これが今回の最後を飾るものです
軍の精神と指揮 です

軍の編制のために、どんな立派な規則をこしらえても
同時に、その国の市民にも戦士としての精神を持たせない限り 意味のないものです

なぜローマがかつて、威風堂々と四方八方を制圧できたのか
それは、彼ら自身の制度によって、育くまれた市民道徳と
軍人精神が、混ざり、一体化したのに外なりません

彼らがこの誇るべき精神を失ったのは
軍務をもはや、名誉とも責務とも見なさず

これらをすべて、ゴート人やゴール人の傭兵に任せきりにしてしまったとき
帝国の没落は必至となった


国家の繁栄を助けるためには
それがどんなことであれ、いい加減にしておいたり軽視してはいけない
というのが自明の理であり

この繁栄の第一の要件である産業部分を重視することも忘れてはいけない

ですがそれよりも、壮烈な英雄的精神を奮い起こさせ、育てることによって
国の大をなす、立派な制度 が一番重要なのです

そして軍人と国民が国の発展と存亡を望むとき
政策と正義は、この点で一致します

たとえ、だれがなんといおうと
武人は人々の悲惨をよそに、権力や金に熱中するよりも
皇帝の馬前で、死に立ち向かった方が
武人にとってどれほど尊いことか


軍人精神を起こすための第一条件は
軍に対して社会的、公共的にできる限りの温かい配慮をすることです

第二に、国家への奉公を終えた軍人に
行政部門で空いている位をも満たす優先権を与え
更には、ある種の公務につく資格として
一定期間の兵役勤務を必須の条件とすることです

もしこれらの行政機関が大尉以上の退役軍人に開放していたら
これは彼らの昇進への大きな刺激剤となることでしょう



軍の熱狂と、戦士たる精神の二つは全く異なった性質を持ったもので
たとえ同じ効果を生むとしても、決して混同してはいけない

軍の熱狂は、どんなものも一時的な激情であり
それは例えば、政治的、宗教的、、あたは愛国心からくるものです

一方戦士たる精神は、指揮官の素晴らしき力量によって培われ
かつ軍事制度で身に付くもので
軍の熱狂よりも長く続くものです

この、戦士たる精神は、目の前の状況に左右されない
先見の明がある政府にとって大きな関心のものです


そおして勇敢な行動は、常に報いられ、讃えられなければいけません
階級はその度に応じて敬われねばなりません

そして軍紀は、ただ形式上だけではなく
却って操守と信念の中で息づいていなければいけません


およそ将校たるものは、責任感、勇気および職務への忠誠が必須です
これらがなければ、栄誉も得られず、また軍を軽視される要因にもなるほど
重大で大切なものです

そして、逆境の中でも動じない精神は
勝利や成功で湧く熱狂よりも、一層誇り高いものです

なぜなら、敵陣に向かって突撃する場合 勇気だけがあれば事足りますが
勝利が確定し、自信満々の敵を前にして、一糸乱れぬ抵抗をつづけながら
至難な撤退をおこなうにはそれこそ、英雄的な犠牲心を必要とします

常に必要なものが不足している中で、軍を鍛え上げ
平時には守備隊勤務に起こりがちな沈滞を吹き飛ばし

宿敵に勝る自信を兵士たちの胸の中に叩き込み
また敵を過小評価せず、偉大な功績への憧れを起こさせよ

また、彼らの心の琴線に触れ、あらゆる手段で
その精神を昂揚し、勇気を尚び(とうとび) 、懦弱を戒め、卑怯を恥とするものである


最後に、将校も兵士もすべて等しく、突如襲い掛かるパニックに対して警戒を怠ってはいけません

これは彼らが厳正な軍紀を失い
軍の安全への最大の保証が 整えた秩序の維持にあることを認めなかったとき


どんなに勇猛な軍隊であったとしても起こってしまうものです

パニックに巻き込まれた軍隊は一気に壊乱状態へと陥ります

なぜなら、秩序の破壊が一旦発生すると
それぞれの分野の協同は一切失われ
将校の指揮の声も、もはや兵士の耳には届かず
それ以上戦いを続けることが不可能になり
不名誉な逃亡以外に取るべき選択肢がなくなってしまいます